医療用語

 

医療の質:(定義)診療だけでなく、医療機関で行うすべての業務の質である。診療(看護も含む)の質、職員の質(知識・技術・接遇)、機器・設備の質、経営の質(運営)も含む広い概念である。組織の質であり、組織構成員全員の質そのものである。医療はお世話業であり、もてなし業であり、ホスピタリティが求められている。

 

QOL:(定義)QOL(Quality of Life)の訳語には、生命の質、生活の質、人生の質などがある。医療においては、生活の質の概念で捉えられることが多い。QOLには主観的(subjective)・客観的(objective)、または、身体的(physical)・精神的(mental)・機能的(functional)という観点がある。主観的QOLは、満足度ともいえる。延命を優先的に考えてきた現代医療に対する反省として、患者の立場に立って、苦痛や障害の緩和といった生活の質(QOL)の側面に焦点を当てることの重要性が認識されるようになってきた。

 

患者の権利:(定義)医療提供プロセスの全般にわたって、患者が有する権利をいう。医療者中心のパターナリズム〔豊かな知識をもつ父親(医師・医療従事者)が、子共(患者)に関する様々な意思決定を本人に代わり実行したほうがよいという考え方〕から、患者指向の医療への変化のなかで、発生した概念である。治療に関係する自分の情報を知る権利、治療法の選択権、自己決定権などが、代表的な権利といえる。

 

医療:(定義)医療は、基本法ともいえる医療法では定義されていない。一般には、医療は医学の社会的適用であるといわれている。すなわち実戦である。医療とは、狭義には、診療(診断と治療)をいう。広義には、健康に関する世話をいう。健康に対する世話とは療養(ケア)のことであり、医療と同義である。療養とは長期療養(ロングタームケア)であると誤解する傾向があるが、療養には短期療養(ショートタームケア)と長期療養がある。

 

診療:(定義)診療とは、字義のとおり、診断と治療をいう。すなわち、狭義の医療と同義である。

診療行為・医療行為:かつての医療は、医(医師)の行為を意味していた。しかし、医療の進歩とともに、専門分化が進み、多くの医療職種が派生し、医療は医師の行為だけではなくなり、医師が行っていた医療行為も、他職種が行うようになった。看護師による限定的な点滴行為、検査技師による採血、放射線技師のレントゲン撮影、薬剤師の服薬指導、救急救命士の人工呼吸チューブ挿管など、むしろ、医師以外の職種の役割が拡大している。有機的に連携したチーム医療が求められている。

 

看護:(定義)看護業務とは、診療補助業務と生活支援業務、およびこれらの業務を円滑に提供するための管理業務からなる。

 

薬剤関連業務:(定義)購入薬品決定、保管、処方(指示)、指示受け、監査、服薬指導、調剤、投与(実施)、効果・反応確認など、医療機関における薬剤に関連するすべての業務をいう。

 

根拠に基づいた医療:(定義)提唱者であるサケット博士によれば、“現今の最良の根拠(エビデンス)を、良心的・明示的・妥当性のる用い方をして、個々の患者の臨床決断を下すこと”と定義されている(1996)。また、我が国の厚生省(当時)医療技術評価推進検討会報告書では、診ている患者の臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索し、それらを批判的に吟味した上で患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考慮した上で臨床判断を下し、自分自身の専門技能を活用して医療を行うこと“と説明している。エビデンスとは、単に、事実や症例の蓄積ではなく、検証可能な方法で集積されたデータに基づいて、科学的に検討された臨床研究をいう。

 

情報開示・情報公開:(定義)情報開示とは、特定の関係者に情報を提供することであり、情報公開とは、不特定多数に情報を提供することである。

 関連用語の説明:インフォームド・コンセントは、説明と同意と訳されることが多い、診療に関する情報を患者に分かるように説明し、患者が理解し、自分の判断に基づいて同意を与えることをいう。主語は医療者ではなく患者であることに留意しなければならない。

                 

                       

チーム医療:(定義)医師、薬剤師、看護師などの各医療職が専門性を最大限に発揮し、かつ、連携・協働して提供する医療をいう。医療法大1条の2に、“医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない”と規定されている。

 

インフォームド・コンセント:(定義)医師等の分かりやすい説明に基づいて、理解し、納得したうえでの患者の同意をいう。自分の疾病名、病状や検査結果等から解釈される現在の状態、適応となる治療方法とその成功率や副作用、予後などについて、医師から十分な説明を受けたうえで、患者自身が自分の状況を判断し、治療方法の最終決定を下す、“患者の自己決定を支援する一連のプロセス”といえる。医療側は、説明とともに複数の選択肢を提示して、患者が最終決断をする自己決定プロセスを支援するという点を強調して、インフォームド・チョイスという用語を用いることもある。

 

臨床試験:(定義)薬剤、医療用具等、さらには外科的手法や介護等も含め、人に適用したときの評価を行うための科学的な実験一般をいう。

 

クリニカルパス:(定義)症例ごとに到達目標を定め、その目標に至るための診断、治療、看護など、チーム医療に参画する医療従事者の行為と時間軸の二次元に表した予定(工程)表をいう。

 

医療事故:(定義)医療事故(アクシデント)は医療にかかわる場所で、医療の全過程において発生するすべての事故をいい、医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。医療行為はもともと不調な部分をもつ人体に対する侵襲行為(検査、手術、薬物)であることが多く、予想外の有害な結果を発生し得るという本質的な難しさがある。現在の医療水準から判断して正しく実施された医療行為であっても、事故の原因となり得ることが医療の特徴の一つである。それに対して、医療を提供する過程で何らかのミス(見込みノミス等注意義務の怠りからくるもの)があった場合には医療過誤という。


 電子カルテ:(定義)従来医師・歯科医師が診療の経過を記入していた、紙のカルテを電子的なシステムに置き換え、電子情報として一括してカルテを編集・管理し、データベースに記録する仕組みのことである。


ISO(国際標準化機構):ISOは国際間での規格の統一を推進するために1947年に設立された団体である。国際的に取引される製品や部品の規格を統一することが主たる目的であったが、近年では規格の範囲が広がり、品質管理に関する規格(ISO9000)、環境管理に関する規格(ISO14000)なども規定されている。

ALPHA:各国の医療機能評価を行う組織の連盟が「医療の質に関する国際学会」ISQuaにより設置され、各国の代表的な医療評価・認定機構(政府組織、非営利組織など)が加わり、認定に関する国際協調が進んでいる。アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フィンランド、フランス、日本、マレーシア、オランダ、ニュージーランド、南アフリカ、スペイン、イギリス、アメリカからの参加がある。

セカンドオピニオン:患者が、検査や治療を受けるに当たって、主治医以外の医師に求めた「意見」。または、「意見を求める行為」。主治医に「すべてを任せる」という従来の医師患者関係を脱して、複数の専門家の意見を聞くことで、より適した治療法を患者自身が選択していくべきと言う考え方に沿ったものである。

ジェネリック医薬品